わたあめちゃんのお墓

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いのちの略奪はいつだって身勝手で理不尽に行われる

わたしは虫が嫌いだ。植物を含めた数々の生き物が好きな中で、虫だけは大切な人を殺されたかのように憎らしい。その中でも蛾が特に嫌いだ。知らない虫はもっと嫌いで、恐怖でしかない。一度室内で虫を見ると、あらゆるものが虫に見えるだけでなく、例えばあの物陰にもいるかもしれない、と何もできなくなる。また、身体中に虫が張っているようなむずがゆさを感じる。

 

バイトを終えて帰宅した。このアパートはなぜだか知らないが虫が多い。その日は特に多かった。蚊よけに買った虫コナーズに蚊が挟まって死んでいる。早く虫地獄から逃げ出したくて、玄関を開けた。できるだけ早く、すぐに閉めたが、何かが入ってきたのが見えた。絶望した。

仕方ないのでそのまま普通に生活することにした。ふと見ると、天井に虫が2匹いた。謎の虫だった。ものすごく嫌だったが、わたしにできることはないので、虫がそのままでいてくれることを祈りながら布団に入った。電気を消すと、窓に虫が何度もぶつかる音がして、しばらくすると止んだ。朝起きると、前の晩の場所に虫はいなくなっていたが、気にしないようにしてパソコンで作業をしていると、視界の端で蛾が飛んでいるのを確認した。心底嫌だった。無視して作業を続けていたものの、我慢できなくなってキンチョールを持ち出した。距離を詰めるには非常に多くの勇気を要した。狙いを定めて噴射した。死ぬには数秒かかった。

わたしはそれに触りたくなくて、今でも彼は部屋の隅に転がっている。

 

わたしは小さないのちを殺した。わずかばかりの罪悪感。ほかに方法はあったかもしれないが、わたしの中では、生きるために仕方のないことだった。

地獄に落ちるなあ、それは静かな諦めのようなものだった。